第3回 東京とどまるマンション概要と登録メリット

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第3回|マンション防災

「東京とどまるマンション」を
管理組合の防災にどう生かすか

制度の概要・登録のメリット・登録に必要な項目を解説します。

2026年(令和8年)8月31日時点
前回は、豪雨時にマンションの地下・1階にある受変電設備、給排水設備、エレベーター設備などが浸水すると、高層階を含めて建物全体の生活機能に影響し得ること、そして止水・排水・初動体制を「設備」と「運用」の両面から整える必要性を取り上げました。
今回は、その防災力を継続的に高める仕組みとして、東京都の「東京とどまるマンション」制度を整理します。

1.「東京とどまるマンション」とは

東京都が、災害時でも住み慣れたマンションで生活を継続しやすくするための取組を行う共同住宅について、所有者等からの申請により登録・公表する制度です。

大規模災害では、建物が倒壊しなくても、停電・断水・エレベーター停止・トイレ使用制限などによって、マンションでの生活継続が難しくなることがあります。制度の中心にあるのは、こうした状況を想定し、「在宅避難」を実効性のあるものにすることです。

マンション防災の視点 「避難所へ行くこと」だけを防災と考えるのではなく、建物の安全が確保されている場合に、マンション内で生活を継続できる条件を平常時から整えておく。
そのためのソフト対策とハード対策を見える化する制度、と捉えると分かりやすいでしょう。

2.2026年度からは防災対応力を「☆1~☆5」で表示

2026年度の制度見直しにより、登録マンションの防災対応力は最高5段階で表示される仕組みになりました。基本となるソフト対策に、ハード対策をどこまで組み合わせているかが分かりやすく示されます。

表示 主な考え方 登録内容
☆1ソフト対策防災マニュアル+防災訓練または安否確認方法
☆2ソフト+ハード1項目下記ハード対策のうち1つ
☆3ソフト+ハード2項目下記ハード対策のうち2つ
☆4ソフト+ハード3項目下記ハード対策のうち3つ
☆5ソフト+ハード4項目下記ハード対策をすべて登録

ハード対策として評価される主な項目は次の4つです。

  • 非常用電源:停電時でも給水と1基以上のエレベーター運転を可能にする設備
  • エレベーター閉じ込め防止対策:リスタート運転機能
  • エレベーター早期復旧対策:自動診断・仮復旧運転機能
  • 防災備蓄資器材の確保

3.登録するメリット ― 「登録」より、その後の防災強化が重要

管理組合にとっての実務上のメリットは、東京都の登録簿で防災への取組を対外的に示せることに加え、登録マンションを対象とした各種補助制度を活用しやすくなることです。特に2026年度は支援内容が拡充されています。

主な支援 補助率 上限額 ポイント
防災備蓄資器材(通常分)2/3100万円簡易トイレ、防災キャビネット、炊き出し器等。所定の訓練が必要
防災備蓄資器材(地域連携分)10/10150万円町会等との合同防災訓練など所定要件あり
備蓄倉庫2/3133万円設置の検討・設計、整備費用
非常用発電機2/32,000万円停電時の給水+エレベーター1基以上の運転能力が必要
蓄電池3/41,316万円等18.8万円/kWhとのいずれか小さい額
太陽光発電・V2X3/4合計3,000万円設備の組合せ等に要件あり
浸水対策2/3833万円非常用電源を浸水から守る調査・企画・改修。止水板、防水扉等
水害対策とのつながり 前回取り上げた止水板・防水扉等も、条件を満たす「東京とどまるマンション」で、非常用電源を浸水から守るための対策として実施する場合、東京都の浸水対策設備導入促進事業の対象になり得ます。

補助率は2/3、上限833万円(調査・企画と改修の合算)です。

ただし、単に入口へ止水板を付ければ自動的に対象になるわけではなく、浸水想定区域等、非常用電源との関係、対策の有効性など個別要件の確認が必要です。

また、東京都の公式な登録簿にマンション名や登録内容が掲載され、登録ステッカーも活用できます。防災への取組を居住者・購入検討者等に説明しやすくなる点はメリットですが、「登録すれば資産価値が必ず上がる」とまでは言えません。

管理組合としては、登録そのものを目的化せず、防災計画・訓練・設備整備を進めるための仕組みとして利用することが重要です。

4.登録に必要な項目 ― まずは「ソフト対策」から始められる

既存マンションが登録を検討する際、非常用発電機や専用の備蓄倉庫を最初からすべて備えている必要はありません。2026年度基準では、まず耐震性を有すること【必須】が前提となり、基本的なソフト対策は次の内容です。

  • 耐震性を有すること【必須】(新耐震基準、または耐震診断・耐震改修により耐震基準への適合が確認されていること)
  • 防災マニュアルを策定していること【必須】
  • 「年1回以上の防災訓練」または「安否確認方法の構築」を実施していること【必須】
備蓄倉庫がなくても登録は可能 専用の備蓄倉庫は☆1登録の必須条件ではありません。
非常用電源も、ソフト対策で登録する場合の必須設備ではありません。
まず防災マニュアルと訓練・安否確認体制を整え、登録後に補助制度を利用して備蓄や設備を段階的に充実させる進め方が考えられます。

5.管理組合で登録を進める実務フロー

現状把握
不足項目を整備
管理組合内で意思決定
東京都へ登録申請
登録後に防災力を強化
1

現状把握

耐震性、防災マニュアル、防災訓練、安否確認方法、非常用電源、エレベーター機能、防災備蓄の現状を確認します。

2

不足項目を整える

防災マニュアルがなければ策定し、訓練または安否確認方法を整備します。補助金活用を考える場合は、設備計画と申請時期も同時に整理します。

3

管理組合内で意思決定

理事会で登録目的・公開情報・今後の防災計画を確認します。設備工事や予算支出を伴う場合は、管理規約・予算・工事内容に応じて総会決議の要否を個別に判断します。

4

東京都へ登録申請

登録申請書と記載内容確認書等を提出します。電子メール、郵送、窓口で申請できます。書類に不足がある場合は、必要書類がそろった日が受付日となる点に注意します。

5

登録後に防災力を高める

防災訓練を継続し、簡易トイレ・防災キャビネット・備蓄倉庫・非常用電源・浸水対策などを、建物の弱点と予算に応じて段階的に整備します。

6.登録とあわせて確認したいマンションの防災対策

制度の☆表示は分かりやすい指標ですが、同じ☆数でもマンションごとの災害リスクは異なります。洪水・高潮・内水氾濫・地震・液状化などのハザード、受変電設備や給水設備の位置、給水方式、エレベーター台数、居住者構成、管理員の勤務形態などを踏まえて、「何が止まると在宅避難が難しくなるか」を確認することが重要です。

  • 停電時、給水設備はどこまで動くか
  • エレベーター停止時、高層階・高齢者の生活をどう支えるか
  • 断水・下水機能停止時、携帯トイレを何回分備えるか
  • 受変電設備・非常用電源が想定浸水深より低い位置にないか
  • 止水板は「保有」だけでなく、誰が・いつ・何分で設置できるか
  • 防災マニュアルが実際の設備配置・連絡体制と一致しているか
登録は「ゴール」ではなく、防災改善の入口です。
非常用電源だけ整備しても不十分な場合があります 水害リスクのあるマンションでは、非常用電源を新設しても、その設備自体が浸水すれば機能しません。
「非常用電源+浸水対策」を一体で考える視点が欠かせません。

7.補助金を利用するときの注意点

補助制度には申請期間、対象経費、工事・契約の時期、訓練要件などがあります。特に非常用電源・浸水対策設備の2026年度申請では、交付決定通知より前に契約等を行うと補助対象外となります。また、予算額に達した時点で受付終了となる場合があります。

防災備蓄資器材の補助についても、登録だけで自動的に補助されるわけではありません。通常分では安否確認訓練と購入資器材を活用した訓練、地域連携分では町会等との合同防災訓練など、制度ごとの要件があります。

管理組合で徹底したい3点
  1. 購入・契約を先にしない
  2. 最新年度の手引き・要綱を確認する
  3. 登録申請と補助申請のスケジュールを逆算する

まとめ|低コストのソフト対策から、マンションの「住み続ける力」を高める

「東京とどまるマンション」は、特別な高性能マンションだけの制度ではありません。耐震性を有する既存マンションであれば、防災マニュアルの策定と、防災訓練または安否確認方法の構築というソフト対策から登録を検討できます。

そして登録後は、簡易トイレ等の防災備蓄、備蓄倉庫、非常用電源、浸水対策などについて、東京都の補助制度を活用できる可能性があります。

大切なのは補助金ありきで設備を選ぶのではなく、自分たちのマンションのハザードと設備上の弱点を把握し、「停電・断水・エレベーター停止が起きても、どこまで生活を継続できるか」という順序で対策を組み立てることです。

前回の水害対策で確認した「水はどこから入るか」「守るべき設備はどこか」「誰がいつ動くか」に、今回の制度を組み合わせることで、防災計画を具体的な設備整備と訓練へつなげやすくなります。

管理組合で制度利用を検討する際は

登録条件を満たすことだけでなく、マンション固有のハザード、設備配置、管理体制、予算計画まで確認し、「登録後にどの防災対策を優先するか」を整理することが重要です。補助制度を利用する場合は、契約・工事前の申請時期にも十分注意しましょう。

参考・出典(2026年8月31日確認)
  • 東京都住宅政策本部「東京とどまるマンション情報登録・閲覧制度」
    東京都公式ページ
  • 東京都「『東京とどまるマンション』登録表示制度の見直しを行います」(2026年6月5日)
    東京都公式ページ
  • 東京都「『東京とどまるマンション』補助事業などの受付を開始します」(2026年6月5日)
    東京都公式ページ
  • 東京都マンションポータルサイト「東京とどまるマンション普及促進事業」
    東京都公式ページ
  • 東京都マンションポータルサイト「東京とどまるマンション備蓄倉庫導入促進事業」
    東京都公式ページ
  • 東京都マンションポータルサイト「非常用電源・太陽光発電設備・V2X設備/浸水対策設備導入促進事業」
    東京都公式ページ